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dulcis in fundo

 コンコン、と控えめなようで部下の叩くものより大雑把なノック音がして、顔を上げた。
 案の定、俺が許可を出すより早くドアが開き、見慣れた金髪の頭がひょこりと顔を覗かせる。
「おばんはー、ベルナルド」
「……やあ、ハニー」
 ピシッと髪を整えてたジャンが、隙のない格好には不釣り合いの人懐っこい笑みを浮かべて、俺の執務机に駆け寄ってくる。
「おいこら、ジャン。ネクタイ」
 机の上に積まれた書類の山の隙間に手を着いたジャンを見て、近くのソファで契約書と無駄な睨み合いをしていて不機嫌なルキーノが更に眉間の皺を深めて文句を言う。
「げ、あんたもここに居たのか」
「あー? なんだその態度は。その格好だとスーツ着こなしてるんじゃなくて、着られてる小僧にしか見えんだろうが。使いっ走りの下っ端と違うんだぞって何度言わせれば済むんだ。ほら、こっち向け」
 へーへー、とジャンは歩み寄ってきたルキーノの方に向き直ったけれど、ぷぅっとガムを膨らませてみせる。当然、ルキーノは更に文句の前に舌打ちを上乗せさせる。
「ハイスクールのクソガキだってなあ、叱られたらもうちょっとマシな態度取るだろうが」
 グイッとルキーノはジャンのネクタイを遠慮なしに引くと、二人の間でパチンとショッキングピンクの風船が弾ける。
「そりゃどーもすみませんねえ。俺、ハイスクールなんてお上品なトコ通ってませんカラ」
 心にもないと書いてあるジャンの表情にクスクス笑うと、ルキーノがチラリと非難めいた視線を向けてきたので、仕方なしに助け舟を出してやる。
「ボス、可愛い部下を虐めるのが楽しいのは分かりますが、そろそろお時間ではありませんか? ――何か忘れ物でもあったかい、ジャン」
 気を取り直したらしいルキーノが、ジャンのネクタイを締め直し始めて、ジャンがそうそうと言葉を継ぐ。
「今日さ、護衛でジュリオ借りてくけど、あんたらはいいのけ? 移動の時は何時もだけど、フルタイムって久しぶりだからさあ」
「ああ、今日はジャンとイヴァンも一緒だし実質二人の護衛になるからな。それに俺もルキーノも顧問の方々も、ヤバイお出かけの予定はないから通常の護衛で十分なんだよ。ジュリオも最近忙しくさせちまったからねえ……たまにはご褒美をやらないとだろ?」
 整えられたネクタイの結び目を片手で弄りながら、ジャンが一瞬不信げな目をしたが、すぐにああ、なる。と納得する。
「俺のシケタツラだけご褒美にするには申し訳ねーから、帰りにスタンドでアイスでも食べてくるかね」
 ジャンのネクタイのタイピンをきっちり付け直したルキーノは、よしと頷いてバシバシとジャンの肩を叩く。
「バッチリ頼むぜ、ボス。俺がいないからって粗相するんじゃねーぞ」
「あいよー」
 軽いチンピラのような声音とは裏腹に、ぴしりとカポの面を見せて、完璧な仕草でジャンはそこに立っている。
「あっと、そうだったダーリン」
 ジャンは俺の方に向き直って、簡単な仕草で俺の目の下を辿って苦笑して見せた。
「あんた、昨日から休んでないだろ? 俺にはカポ命令発動されるまえに、寝とけよ。……んじゃ、二人とも、チャオ」
 ちゅ、とジャンは投げキッスを振りまいて、立ち去る。
 バタンと扉が閉まると、再び重苦しい沈黙が訪れた。
「……――あんたは、ジャンに振りまく愛想の1/3くらい他に使えないのか」
 ジャンの背中を見送ったルキーノが振り返るのと同時に呆れ声をもらす。
「営業用スマイルは別決算だから安心しろ」
 声のする方は見ずに返事をして、何台かの電話と書類の束を机の端に押しやる。
「はーそーですか」
 ガキのようにイジけた声をBGMに、引き寄せたタイプライターに紙を噛ませようとした腕が捕まてる。
 怪訝に視線を上げると、恐らく自分と同じ表情があった。
「寝ろって言われただろ」
「寝るさ」
「あいつが帰ってくる直前に、だろ。何時間後だよ」
 ……こうなると、ルキーノは暴君らしくテコでも動かないことは経験則で嫌というほど分かっていたので、黙り込んで非難の視線だけ向ける。
「抵抗するか?」
 ニヤリと人好きらしい笑顔に口角を上げると、ルキーノはまた腕をぐいと引く。それだけで椅子から尻が僅かに浮いた。
「……しない」
「あんたも分かってきたな」
 まだ白紙のままの用紙を机上に投げ捨てて、深く溜息を吐く。
「これでも物覚えはいい方なんでね」
 ルキーノは軽く笑って、手を離す。
「当たり前だ。呆けるにはまだ早いぞ」
 指の感触が残った腕を摩って書類を抽斗に放り込み始めると、ルキーノは宿題をサボろうとするガキを見張る教師のような目で俺を見ていて、それが何だか可笑しくて笑ってしまう。
「何笑ってる」
「いやね、お前は俺の保護者かなんかかって思って」
 くすくす笑う俺を心底呆れ果てたような目で見て、ルキーノはがりがりと頭を掻く。
「……いい大人なんだから、言われなくても自制しろ」
「はいはい、マンマ」
 軽口叩いて再び机上に視線を戻すと、今度は手の甲をタトゥのある手に縫い付けられて顔を上げる。
「――ルキ、」
 一瞬、視界に分かりやすく不機嫌な目が見えた。ちゅ、とらしくなく触れるだけの口づけが降って、僅かに離れた顔はもう無表情になっている。
「誰がマンマだって?」
「…………いや、まだまだガキだなお前も」
 ムスっとした声に素直に答えると、ルキーノはますます声音を不機嫌にさせる。
「どうしてそうなる」
「無自覚か? あと、執務室でしたら罰金だって言ったよな」
 トン、と肩を押したけれど、ルキーノは退くつもりはないらしく、じっと俺を見たままだ。
「なら連邦準備銀行を襲撃してくるかな」
 再び近づいてきた唇を苦笑一つで掌に押しとどめる。
「これで我慢しとけ」
 ポケットの中にいれておいた飴の包装を片手で破って、キスの代わりにルキーノ口にねじ込む。
「ひでえなあんたは。ジャンのキスだったら受け入れる癖に」
 もごもごと甘ったるいイチゴの匂いをさせながら、まるで苦いものを噛んだような顔でルキーノは文句を垂れる。
「――この俺に間男やらせるなんてあんたぐらいなもんだ」
 諦めたのかルキーノは手を離して、行儀も悪く机の端に腰掛ける。
「間男……ねえ」
 目の前の男には似合わない単語を思わず自分も口にすると、赤い目がちらりと振り返る。
 非難めいた視線は、違わないだろうという自嘲なのか、俺に違うと言って欲しい願いからか、どちらかは分からなかったけど、とにかく。
「若造め」
 その一言でルキーノは想像通り沸点を迎えて、がりっと飴を噛み砕いた音と同時に机を降りると、俺を荷物をそうするようにひょい抱き上げる。
「どうでもいいから早く寝ろ」
 ルキーノは荷物のように俺を肩に抱えると、べしりと尻を叩く。
「……お前、仕事は」
 大股でルキーノは移動し始めて、動く床を眺めながら聞く。
「金曜の夜だぞ。分かってて言うのが、年寄りの作法なのか」
「お前のシマは週末が一番忙しいだろ」
「週末を恋人に使わない男がいるか」
 想像通りの受け答えに、再び彼の背中に笑い声を漏らす。
「……笑うな」
「嬉しいんだよ」
 俺の言葉にルキーノは足を止めかけて、がくりと身体が揺れる。
「…………あんた、は――普段言わねえくせに……。性格悪くて嫌になるな」
 ガチャリと視界の外で隣室のドアが開かれる音がして、そのまま読書灯だけ点けっぱなしになっている仮眠室のベッドに放り投げられる。
「乱暴だな……。疲れた恋人に優しくしてくれないのか?」
「言ってろ」
 目が据わっているルキーノの手が伸びてきて、するすると靴とスーツが脱がされていく。
「本部で何してくれる気だ」
「こっちは私室だろ。……この状態で車まで担いでいってやってもいいぞ」
 舌打ちと共にルキーノは俺のジャケットもネクタイも背後に投げて、ベストの隙間に手を突っ込んで幾つかボタンを外したシャツの間から指を差し込む。
「寝させてくれるんじゃないのか?」
 無駄と知りつつ言ってふわふわと笑うまま、ルキーノの髪を撫でる。
「安心しろ、朝までぐっすり眠らせてやるよ」
 柔らかい赤毛を触っていた指が絡め取られて、指先に口づけられる。
「人のことからかって虐めるのは年上の趣味か? ……お仕置きしてやるよ」
 何処か強がりのような言葉に微笑むと、今度はルキーノの口元も緩く笑った。
「嬉しそうにすんな、ドマゾめ」
 手際が無駄のいい年下にベルトも抜かれて前を開かれ、首筋に触れるだけのキスに身体を震わせる。
「失敬な……」
 ルキーノの背中に腕を回して、柔らかく抱きしめる。
「そりゃ失礼。てっきり俺を煽って、虐められたいのかとばかり」
「……どうだろうね」
 くすくすと笑う言葉に曖昧に答えると、ちゅっと今度は眼鏡をずらされた目元にキスを落とされる。
 何時もの香水でなく、濃く香るのはさっきルキーノの口に押し込んでやった飴の甘ったるい匂い。
「俺にはまだ分かりかねるな。もっと教えろよ。俺も物覚えは悪くない方だってのは知ってるだろ?」
 唇を重ねられて、文字通り甘い舌が入り込んで来て俺の舌に絡むようにぞろりとなぞる。
「――ン、」
「キャンディより甘いな」
 思ったよりあっさりと離れた唇は、色男のテンプレのような言葉を吐く。
「言うと思った」
「分かり易い若造だからな」
 嫌味に返した言葉に、さっきまでとは打って変わって今度は機嫌良さそうな声音でルキーノは歌うように言う。
 ――その声が好きだとは、俺はきっと死ぬまで言わないだろうけれど。
 代わりに、背中に回していた掌でするりとルキーノの背筋を撫でる。
「なんだ、俺を虐めるのはもう終わりか?」
 じゃあ俺の番だな、とルキーノは笑って、俺の髪を撫でて摘んだ髪の先にも口づける。
「あんたはガラスの靴だけ置いて逃げる、とかしでかしそうで怖いんだよ、俺は」
 ふわりとした笑みの隙間で、ぽつりとルキーノが零す。
「俺がそんな証拠残すヘマをするとでも?」
 殆ど反射的に答えると、やっぱり相手からも即ため息が返ってくる。
「……そういうときは逃げないよ、って言うものですよ、お姫様。ホント、性格悪いな」
 がばっとルキーノは身体を起こして、まだ履いたままのスラックスを下着ごと一気に抜き取りにかかる。
「首輪か足枷つけておかないとダメなのかね」
 既に脱がされていたものと同じように、ぽいとルキーノは引き剥がしたスラックスを背後に投げ捨てると、そっと俺の片足を持ち上げて、指先でなぞるように靴下を引き抜く。
 足首に指が触れたのにぴくりと震えると、それだけでルキーノは妙に嬉しそうにすると、素足の爪先をぱくりとくわえ込んでにやりと笑う。
「っ、こら、汚い……」
「ん――何、唾液で濡れるのも許せない?」
 冷えた足先に触れるルキーノの舌が熱くて、身を捩る。
「そういう意味じゃない……」
 口が離れれば、触れた場所が外気で瞬く間に冷えるその感覚だけで、じわりと腰が揺れてしまう。
「そうだな。逃げれないようにこの足、噛み千切ってやろうか」
 爪先に息が触れる。そのまま言葉通りに、足首に甘く噛み付かれた。
「――――、っ……くすぐ、った」
 腱を甘噛みして、ルキーノの指先が濡れた場所をつっとなぞる。
「ふ……、ぅあ……ルキ……」
 ぬるりと蠢く舌と、立てられる歯の感触にじわりと目に涙が浮く。
「噛み痕沢山つけたら、逃げれないだろ。あんた捕まえて俺のって、外で宣伝して歩くわけにはいかないなら、これくらい……あんたが他の奴ベッドに誘えないくらいのことは、させろよ」
「――――そんな、嫉妬深い質か、お前……」
「あんたが嫉妬してくれない分、俺がしてやろうっていう、親切心だよ」
「どこ、が……っぁ、」
 そろっと足の内側を撫でられて、声が上擦る。
「もう我慢出来ない?」
 足の付け根を強く吸われて、ひくりと震えた手でルキーノの顔を撫でる。
「っ、ぅ…、言ってない……」
「こっちは、言ってる」
 僅かに湿った掌で、予告なく半ば立ち上がっていたペニスを擦り上げられる。
「ひっ、……ぅ…、ン……や、」
 急に直接触られて湧いた性感に、目を閉じてルキーノの髪をぎゅっと掴む。
「足舐められただけでこんなにするなよ」
 笑うような声で、ルキーノは育てるように俺のを扱く。
「ちが……」
「違わない」
 溢れてしまった先走りを塗り込めるように手を動かされ、くちくちと卑猥な音がし始める。
「……涙目、可愛いな」
 ルキーノが俺の耳元に囁きながらキスをして、扱いていた指を離して唾液で濡らすと、ペニスの根本のさらに先に手を伸ばす。
 ルキーノがしようとすることに気付いて、手首を掴んだ。
「自分でする、から」
「俺がしたいんだよ。お前も男なら分かるだろ?」
 俺の言葉と制止を軽く無視して、ルキーノの指先がぬちりと後ろの窄まりに触れる。
「――、そ……いう、のは…オンナに……」
「オンナにこんなマメなことするかよ」
 ぬるりと指先が入り込んで、ルキーノの胸にしがみつく。
「っん、……そん、なの…」
 入り口を解すように動かされる指が、時折奥の方まで差し込まれてぐりっと壁に擦り付けられる。
「ふ……、ぁ、あ…――、や……」
「情事の時のイヤはイイって意味だって言うけど、あんたは特にそうだよな。ほら、そのまましがみついてろ」
 酷い言い草に反論も出来ないのに、まだキッチリとスーツを着込んだままのルキーノに苛立ちを覚えて、ネクタイを弛めてシャツのボタンを口と指で外してやる。
「……脱がしてくれるのか?」
「俺……だけ、…嫌に決まってる、だろ」
 増やされた指に話すのを邪魔されながら、空いた隙間に口を寄せて、裸の胸をぺろりと舐める。
 何度も繰り返しもどかしいキスを繰り返すと、小さな吐息が降る。
「…………なあ、もう挿れていいか?」
 ルキーノは俺の肩を片手で抱き寄せて、こめかみや頬に口づけながら問いかけられる。
「っ、……、聞くな……」
 ふっとルキーノは笑って、スラックスを脱いで俺の足を開かせる。
「なあ……、こっち見ろよ」
 ルキーノの穏やかな声に視線を動かし、薄闇に濃い血の色の瞳を見上げる。
 目元が撫でられて、そのまま眼鏡が取り外された。
 じっと見つめる瞳が細められて、そっと頬を撫でられる。
「ベルナルド……」
 俺の好きな声音で、名前を呼ばれて何だか泣きそうになった。
 耐えきれなくて腕を伸ばすと、そのまま抱きしめられる。
 後ろにルキーノの熱いペニスの先が触れて、ひくりと背が震えた。
「…、……ベルナルド」
 さっきまで軽口を叩いていた声が、濡れたような色で名前を囁く。
「あ……、ぅ……」
 ぐっと押し込められる圧迫感に息を飲んで、ルキーノの背中に爪を立てる。
「ほんと……噛み殺してやろうかって、思うね。こんな美味しそうな目……、あちこちに晒して」
 少しずつ腰を進めながら、ルキーノが俺の額に汗で張り付いた髪を撫でつけて、唇と瞼に幾度となく口づける。
「なに……い、って…………、ッぅあ――ぁ、あ…」
 ゆっくりと差し入れられていたものが、ぐっと強く押しつけられて最奥に刺さって、ひくひくと腹が震えているのが自分で分かる。
「分かってるんだろ……?」
「ひ、っ……――あ、っぅ……」
 かぷりと耳を噛まれて、答えることも出来ずに頭を振る。
「逃げるな……。――中、締まってる…気持ちいい?」
「あ、あァ、……わから、な、――」
 中に挿れられたまま腰を揺すられて、もっと奥を求められるような感触にぽろぽろと涙が零れる。
「あんたは嘘吐きだからな……。本当はさっきみたいに全部分かってて、俺を煽ってるだけなんだろ?」
 にやっと酷く意地悪くルキーノは笑って、俺の腰を抱いてぐちゅぐちゅと抽送し始める。
「――っく…、ぅ……ちが、………っ、ァあ…」
 前立腺の辺りを抉るように擦り付けられて、喉を晒して喘ぐ。
「ベルナルド……、――何時もお綺麗な顔して仕事してるあんたをこうやって汚せるのが俺だけなのが、……」
「っぅ、ア…………」
 喉元に噛み付かれてまた小さな悲鳴を上げてしまう。
「…………ぅ、ルキ……ノ、」
 ルキーノの髪が何時の間にか解けていて、キスのたびに首筋に触れることにすら声を上げて足掻く。
「……ジャンにも、見せないんだろ?」
 そう言ったルキーノを潤んだ瞳に捉えると、何処か苦しそうな表情で、思わず頬の傷に指先を伸ばしてなぞる。
「お前も、な……」
 その傷の理由も何も、晒さないことを知っていて言うと、ルキーノは泣きそうな顔で笑う。
「――普段から、それくらい可愛いこと言え」
 そのままどちらからでもなく唇を重ねて、まだ残る甘い味を奪うように深く解け合う。
「ん……っふ、ベルナルド…………もっと見せろ」
 何度も舌を甘噛みし、歯列を舐められながら、乱暴に腰を使われる。
「っ、ひゃ……ァ、んんン……るき、ルキーノ……、」
 息が上手く吸えなくなって、ルキーノの触れている場所が全て熱く炙られる。
「なか……、出していいか?」
 ちゅっとまた耳に口づけられて甘い毒を吐かれて、震えるまま頷く。
「っ、ベルナルド……もっと、汚れろよ…………」
 ルキーノの手が再び俺のペニスに触れて、先をぐりぐりと虐める。
「っあ……、ァ……い、く……」
 両方の刺激に耐えきれず、ルキーノの掌の中にとぷりと白濁を吐く。
「っ――、ん…………ぅ、ベルナルド、」
 ぐいっと最奥に熱が押し込められて、どくどくと溢れたものに満たされる。その感覚にガクガクと震えてルキーノの肌に爪を立てる。
「は――……あ…、ぅ……るき……の、」
 ルキーノはそのまま俺を抱きしめて、お互いの息が落ち付くまでそっと髪を撫でてくれる。
「……後の始末、してやるから。寝ろよこのまま」
 優しい言葉とは裏腹に、挿入されたままのルキーノ自身の大きさはそのままで苦笑した。
「…………だったら抜けよ、先に」
「これくらいの役得あってもいいだろ……。そのうち抜ける」
「若いな……やっぱり」
 思わず言ってしまった言葉は事後に口にするには甘くなさ過ぎて、自分で口を噤んだけれど、ルキーノは気にするでもなく笑う。
「大して変わらない癖に。あんたはもうちょっと自分にも甘くなれ。ドエムだからしょうがないんだろうけどな」
「誰が……」
 言いながら、撫でる手が心地よすぎて、ぎゅっとその胸に顔を埋める。
「寝ろよ……。ジャンも心配するぞ」
「こんな時に別の男の名前を出すか?」
「お前に一番効く名前なのは確かだからな。優しい恋人でよかったな」
 また、ふわりと甘い匂いがして、それに混じってルキーノが何時も纏うムスクの匂いが微かにした。それが妙に安堵感を呼んで、とろりと瞼が落ちる。
「ん……。ありがとう、ルキーノ」
「……変なタイミングで礼を言うやつだなあんたは」
 ふにふにと子供がされるように頬を突かれて、またぎゅっと抱きしめる。
「おやすみ、ベルナルド」
 穏やかな声は、やはり俺の好きな響きで――優しく眠りの淵に落とされた。