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Na2SO3(2)

 水音に混じって、あるいは笑い声のようにそれは聞こえた。
 鼻にかかった溢れ出すような嬌声は、俺が出させていると分かっていたが、どこか遠い場所の出来事のように感じる。
 抱いている背中が、びくびくと俺の胸の上で跳ねる感触だけが自分には現実感をもたらした。
「痛くないか?」
 バスタブのお湯の中で震えている太腿を撫でてベルナルドに問い掛けると、傾いていた頭が僅かに頷く。こめかみや耳に優しくキスを落とすと、また小さな鳴き声が漏れた。
 そのチューニング中の楽器のような声音に目を細め、ペニスを扱いてやってる指に僅かに力を込める。くびれに指の腹が引っかかるたびに腰が浮き、重なっている足が蹴られたが、空いてる手で腰を押さえつけ半ば乱暴に追い立てた。
 囁くような悲鳴が上がって、手の中に生温い体温が吐き出される。
 ぐったりとした身体を撫でてやると、ベルナルドは甘えるように身体を擦り寄せてきた。
 汗ばんだ項に口づけると、子供はちゃぷりと音を立てて俺の方に顔を向けた。
 うっとりとどこか濡れたグリーンの目が俺を見て笑うと、手を差し出して抱きついてくる。
 抱き返すと、まだ半端にかたいものが腹に当たって苦笑してしまう。
 ちゅ、と鼻先に口づけられて、もしかしたらわざとなのかもしれないと気付いた。
「何してるんだ。ん……?」
 言うと、くすくすとベルナルドは笑って、抱きついていた腕を解いて俺の腹を撫でた。
「ベルナルド……」
 俺が名前を呼んだのは無視をして、そっとベルナルドは腰を擦りつけてくる。腹を撫でていた手が半勃ちになってる俺のものをぺたりと触り、自分のペニスを重ねた。
 彼がセックスをしようとしているようにも見えた。このベルナルドは、俺が教えてしまった手淫以外の方法を知らない。相手も、こいつの世界では今は俺しか居ないのと同じようなものだ。
「ン……っ」
 自分のペニスとまとめて、乱暴にも思える手に扱かれ、思わずベルナルドの腕を掴んだ。
 その手は思わぬ力で振りほどかれ、とろりと今にも溶け出しそうな視線を注がれる。また鼻にキスをされ、意味のない歌のような声がその唇から溢れて、抵抗を奪われた。
 柔らかく微笑んで、この世界に何も恐ろしいものがないように見える表情で、ベルナルドは俺と自分のを懸命に擦り上げる。
 逆に俺は、背筋を焼かれ胸を押しつぶされるような罪悪感と、どうしようもない快楽に涙が浮いた。
「は――、…ベル、ナルド」
 歪んだ視界の中で、ベルナルドの声と水音だけがする。
 掴んだ腕を引くと、忘れ去られたままのタトゥが見えた。失われた時間を証明する唯一の証に、空気を求めるように口づけた。
 ベルナルドが、一瞬手を止めて崩れた発音で俺の名前を呼んだ。それだけだった。
 抵抗しない俺をベルナルドは好きなだけ犯し、冷めた浴槽に精液を何度か吐いた。俺は、最後までどこにもいけないままだった。